部屋探しで「おとり物件」に出会うと、本当にムカつきますよね。
ネットで見つけた理想的な間取り、アクセス、そして手頃な家賃の部屋。内見予約しようと不動産屋に問い合わせたところ「まだありますよ!」と明るい返事。
喜び勇んで不動産屋に足を運んでみたら営業マンが開口一番「ごめんなさい!もう埋まっちゃいました。かわりにこちらの物件はいかがですか」——。
「それなら決まった時点で連絡をよこさんかい!」と怒鳴りたいところです。まず嘘をつかれたことにムカつきますし、時間を返してくれと言いたくもなります。
百歩譲って問い合わせた物件以上の条件の部屋を提案してくれたなら怒りも多少おさまるでしょうが、十中八九どこか物足りない物件の資料だけが目の前に並びます。
こんな嫌な思いを繰り返さないために!
この記事では「おとり物件とは何か」から振り返り、おとり物件に騙されずに物件探しをする方法をご紹介します。
1.おとり物件とは
実際には存在しない物件、既に部屋が埋まっていて契約ができない物件などを、入居者募集中と偽っているものを「おとり物件」といいます。
おとり物件にはいくつかのパターンが存在します。
1-1.既に成約済みの物件
もっとも多いパターンが、募集終了後も故意に掲載を継続している物件情報です。人気が高く募集が出ればすぐ埋まるのですが、新規のお客さんを呼び込むのに利用できるため、情報を公開したままにしています。
1-2.全く実在しない物件
住所が「~町」までしか記載されていない、写真の情報が少ないなど、不明確な場合は、存在しない物件の可能性があります。
1-3.嘘が含まれる物件
「駅徒歩5分」→実際には徒歩8分かかる場所だった
「バストイレ別」→間取図に手を加えており実際はバストイレ一緒
など、物件自体は募集中でも情報が書き換えられているパターンも少数ですが存在します。
2.おとり物件はなぜ存在する?
2-1.来店促進
不動産側としては「とにかく来店してほしい」と思っています。賃貸物件の成約率は大体50%前後と言われています。魅力的な物件があれば、問い合わせが増え、来店が増え、比例して成約も増えます。おとり物件を掲載することでで、広告費をかけずに集客・成約を増やすことができるのです。
2-2.成約した物件の削除漏れ
特に2月~4月の引っ越しシーズンは不動産会社も大忙し。契約済みの物件の情報を削除し忘れている可能性も否めません。
1つの物件に複数の不動産業者が絡んでいるケースも多いため、他社で成約した場合に自社の物件情報を削除するまでタイムラグが発生する場合があります。問い合わせた物件が成約済みだった=おとり物件だった、と一概に言えないことも。
そうはいっても、削除していない不動産側に落ち度があるのは明らかです。
3.おとり物件に惑わされない6つのポイント
ネットに掲載されている情報を信じて来店して、無駄足になるのは避けたいところです。ここからは、ネットで見つけた物件がおとり物件かどうかを見分けるための3つのポイントをお伝えします。
3-1.物件情報の「取引態様」を確認
取引態様は4つの種類があり、それぞれ大家さんとの関係がちがいます。もっとも注意すべきは「3-1-2.仲介先物」です。
3-1-1.仲介元付
「仲介」は、大家さんと借り手の間に不動産会社が入って取引をおこなう、もっとも一般的な取引態様です。特にこの仲介元付は大家さんから直接掲載を任された不動産会社のみが該当します。
3-1-2.仲介先物
おとり物件の可能性が高いのはこれ。仲介元付の不動産会社から掲載を依頼された不動産会社の取引態様が仲介先物に該当します。大家さんとの直接の関わりがないのをいいことに、募集が終了してもおとり物件として情報を消さずに利用している場合があります。
3-1-3.代理
大家さんの代わりに不動産会社が入居者募集や契約手続きをおこないます。あまり見ないパターンです。
3-1-4.貸主
個人の大家さんが存在せず、不動産会社自体が保有している物件の場合は「貸主」と表記されます。仲介手数料は必要ありません。
3-2.同じエリアの相場と比較
住みたいエリアの相場をあらかじめ把握しておけば、おとり物件を見分けるヒントになります。
以下のサイトでは市町村ごとや駅ごとの相場を調べることができます。
SUUMO家賃相場(全国版)
同じ間取り、同じ駅からの距離、同じ築年数でも1万円以上安い場合などは、おとり物件の可能性があります。
3-3.最終更新日をチェック
ネット上の物件情報には最終更新日や次回更新日の記載がありますので、最後にいつ更新されたのかも目安となります。数ヶ月間物件が掲載され続けている場合も注意が必要。そもそも条件が良ければすぐ借り手が見つかるはずです。
3-4.問い合わせはメールではなく電話で
不動産会社のサイトや、大手ポータルサイトではメールフォームと電話の連絡先が書かれていることが多くありますが、気になる物件については電話で問い合わせましょう。
メールであれば不動産側に回答を作る猶予を与えてしまいますが、電話であればすぐに回答を聞くことができます。この時「空いてますよ」という答えを聞くことができれば、「3-5.現地集合を提案する」に進みます。
3-5.現地集合を提案する
「近くにいく用事があるので現地待ち合わせで内見したい」と伝えてみましょう。「一度お店に来ていただかないと」「迷われたら困りますのでお店から送迎します」など、理由をつけて来店を促してくる場合はおとり物件の可能性が高くなりますので注意してください。
3-6.同じ物件について別の不動産に問い合わせる
本当に募集をしているのかどうか確かめるためには、掲載している不動産会社以外に問い合わせるのも有効です。入居中だと判明するケースもあります。
4.おとり物件を出す不動産業者はどのくらいあるのか
2016年には、調査した物件情報のうち50%が成約済みの物件情報だった、という調査結果がでました。
成約済みや架空の賃貸物件を掲載し、顧客を店舗に呼び込む「おとり物件」商法。不動産テック会社イタンジの調査で、割安な人気物件の半分におとりの疑いがあることが分かった。イメージ悪化を危惧する不動産情報サイトが対策の強化に踏み切ったが、実効性には疑問が残る。
こうした状況を踏まえて、2017年には、SUUMO、HOME’Sなどの大手不動産ポータルサイト5社が提携し、おとり物件を掲載する悪質な業者をポータルサイトから排除する施策がスタート。1年後にはポータルサイト10社に広がりました。
実際におとり物件を掲載していた不動産業者は掲載停止などの措置が取られており、2017年の調査では、ランダムに選ばれた調査対象物件929件中、78件がおとり物件という結果に。現在も対策の強化が続いています。
5.もしおとり物件だったら
どんなに気をつけていても、来店後「ついさっき決まってしまって…」と言われた場合は、その不動産会社で代わりの物件を探すべきか否か迷うところかと思います。おとり物件に騙された後にするべきことをまとめました。
5-1.掲載サイトへ通報
おとり物件の通報窓口をSUUMO、HOMESなどのポータルサイトに用意してあります。これはサイト掲載を集客手段としている不動産業者にとって大きなダメージとなりますので、ぜひ活用しましょう。
5-2.信頼できる不動産屋を探す
せっかく足を運んだのだから、この不動産屋で他の物件を探してみよう、と思いたいところですが、その場は一旦退店することをおすすめします。
おとり物件で来店を促す時点で誠実な対応とはいえませんし、もし他の物件を勧められて契約すれば、その不動産とは今後長く付き合うことになります。
物件を早く決めることよりも、信頼できる不動産業者を見つけることが大切です。「急がば回れ」でいきましょう。
まとめ
近年ポータルサイトや消費者庁でさまざまな対策がなされ、一般的に「おとり物件」の存在が認知されるようになっています。それでも、おとり物件を掲載する悪質な業者は後を絶ちません。
私たち借り手側にもできる自衛策はあります。理想的な物件情報を見たらすぐに飛びつかず、この記事で書かれてある惑わされない方法を思い出してくださいね。